[魅惑の] SBデザート ◎最新版、来ました。
『ウォーターフォード』を「当日のNo.1」とさせて頂いた、2017年6月29日の南ア限定試飲会@虎ノ門にて、一方の白ワインにおける私的ベストがこちらの『キアモント』手掛けるデザート・ワイン、『フルーフォンティン』。
当時のヴィンテージは’15年でした。
その後、’19年には【AG97点】を受賞。
これは当時の同誌南ア歴代デザートの第3位というとんでもないスコア。
上位陣はすべて万円クラスであり、この価格としては異例も異例でした。
◎世界的にも珍しい、スイート・ソーヴィニヨン・ブラン。
品種の特徴として「清涼感」や「キレある酸」を連想するように、ソーヴィニヨン・ブランは決して糖度を上げるのに適した葡萄品種とは言えません。
故にこの葡萄を用いた甘口造りは非常に手間がかかり、世界を見渡しても殆んど手がつけられていない分野。
カリフォルニアで言えば、『サンタバーバラ・ワイナリー』がSBデザートを造っていましたが、生産を止めてしまいました。
ニュージーで言えば、SBよりはまだ造り易いであろうシャルドネ種でデザートを造っていた『ペガサス・ベイ』も、リースリングに鞍替えしてしまいました。
採算を考えれば彼らを責められませんし、デザートを仕込みたいなら、リースリングやセミヨン、南アならシュナン・ブランあたりを用いれば良いわけで、敢えてソーヴィニヨン・ブランを用いるという苦行の必要は無いのですから。
ですが私イナムラは、この作品を飲んで頂ければ、それが十分に価値在るチャンレジである…ということがお分かり頂けるのではないかと考えます。
驚くべきことに、SB種からのデザートでありながら、その甘みの旨味と密度は他品種の同額デザートに全く劣りません。
それ以上に素晴らしい点が、SB種独特にある十分な酸が、この偉大な甘みの旨味を心地よく綺麗に支え、貴賓さえ生んでいるところ。
この美しき解きほぐしは、他品種では見られない美点です。
▼キアモント(Keermont) アトキン2015年~2018年度版格付け四年連続【第一級】格付け、ストイックな自然派ブティック、『キアモント』。
ステレンボッシュに2003年に設立され、2007年がファースト・ヴィンテージという新興ブティックでありながら、早くもこれほどの評価を得ているのは、リース・ファミリー(Wraith)の志高き真摯な姿勢と、そこから生まれる偉大なワインのクオリティあってのことでしょう。
ステレンボシュ山脈とヘルダーバーグ山脈に囲まれ、ケープ州土着の植物、フィンボスも生息するこの地域で、キアモントもBWI(自然環境や動植物を保護しながらワイン生産を行うプログラム)のメンバーとして、環境に配慮したワイン生産を行っています。
彼らはこの恵まれた自然環境をワインで表現することを目的にしており、科学より自然を優先。
栽培、醸造に関しても可能な限り減農薬や灌漑も少なめになるよう努め、使用するブドウも全て自社管理されたもののみ。
栽培から醸造、瓶詰め、ラベル貼りに至るまで、全て少人数ながらも自社でこなし、細部までこだわった手作りで丁寧な仕事を行っています。
発酵は全て天然発酵。
熟成はほとんど新樽を使わず、果汁の移動緒もポンプよりグラヴィティ・システムを利用。
瓶詰めは濾過せずに。
ブドウ栽培やワイン造りに専念したい…という理由から、テイスティング・ルームも一般解放は金曜日にしか行っていません。
自らには厳しく、葡萄とワインに対しては優しくナチュラルに…それがキアモントのポリシーです。
「機内ワイン採用」の対象として最も誉れ高い、英国ブリティッシュ航空(British Airways)の、しかもファースト・クラス、おまけに二年連続採用を果たしたデザートこそが、この『フルーフォンティン』です。
◎フルーフォンティン (Fleurfontein) フルーフォンティンとは「花の咲く場所」という意味。
世界的にも珍しいソーヴィニヨン・ブランを主体としたデザート・ワインです。
製法としては、遅摘みでも菌による乾燥でもなく、収穫する2〜3週間前にブドウの茎を敢えて曲げる…というもの。
こうすることで葡萄に水分が行きにくくなり、自然に乾燥し、干しブドウのようになっていくのだとか。
これをハンガリー・オークとフレンチ・オークで天然発酵させ、そのまま18ヶ月間熟成。
ろ過せずに手作業で瓶詰めて完成します。
生産量は2400本…即ちたったの≪200ケース≫ほど。
前回が3500本でしたので、随分と減ってしまいました。
ワイナリが言う熟成ポテンシャルはヴィンテージから+10〜15年ほどだそうですが、個人的には酸が綺麗に生き生きしているうちに飲むのがベター(熟成させるなら他品種のデザートでもいいのでは?)と思います。
NV版は未掲載ですが、アドヴォケイト誌でも下記評価。
同じ価格帯デザートの中でもトップ・スコア。
南ア内のみならず、世界としても最高峰の評価です。
この度のご案内は、ノン・ヴィンテージ版。
’19年、’20年、’21年の三つのヴィンテージをブレンドしています。
また今回はじめてルーサンヌを使用。
22%ほどがブレンドされています。
そのせいか、前作よりも甘みがぽってりした印象。
率直な個人的印象としては、100%SB時代のほうが好きでした。
ただ、この価格であれば相変わらず面白い存在です。
このあたりは好みですね。
もともと繊細な味わいを美味しさとして感じる日本人には、ただ甘みが凝縮しただけのデザートよりも、そこに(SB由来の)綺麗な酸や美しい果実味が紛れ込むスイーツのほうがより美味しいと感じるに違いない…と思うのです。
そういった意味では、スタンダードなワインでもピュアさや美しさが光る南アは、私共にとってデザート・ワイン最適地の一つと言えるのかもしれません。
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